名古屋高等裁判所 昭和36年(ネ)270号 判決 1965年8月25日
名古屋市中区東陽町三丁目六番地
控訴人
山内ナヲコ
右訴訟代理人弁護士
山口源一
各古屋市中区南外堀町六丁目一番地
被控訴人
名古屋中税務署長
伊藤育
右指定代理人
松崎康夫
同
服部勝
同
須藤寛
同
柴田富夫
同
内山正信
右当事者間の昭和三六年(ネ)第二七〇号所得税更正決定に対する取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人代理人は「原判決を取消す、被控訴人が昭和三〇年一〇月二〇日付でした控訴人の昭和二八年度分不動産所得を三九八、八〇〇円とした更正処分および昭和二九年度分不動産所得を四一八、七〇〇円とした更正処分中七七、六五五円をこえる部分を取消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴人代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、認否は左記のほか原判決事実摘示と同一(ただし被控訴人提出書証中に乙第一七号証を加え、乙第一〇号証の一を同号証の一の一、二とする)であるから、これを引用する。
被控訴人代理人は次のように述べた。
「控訴人が昭和二九年六月その所有する市場建物のコンクリート床改築は、それがこわれたのを修覆するため行われたのではなく、新たに建築された杉本愛蔵所有の市場建物の床と高さをそろえるために施工されたものである。控訴人所有建物の床の一部にこわれていて修理を要する箇所にあつたが、前記工事はそのこわれたところだけでなく、全部にわたつてコンクリートを打ちなおして行われた。すなわち、右工事は前記杉本所有の市場新築に伴い、両市場を一本として使うため、修理の要否と関係なく行われたものである。
右のように、両市場建物が一体となれば、市場としての効用は増大し、控訴人所有の市場建物の財産価値は増加する。すなわち右改築費用は所得税施行規則一一条二項の固定資産の価値を増加させる部分に対応する金額に当り、全額資本的支出というべきである。」
証拠として、控訴人代理人は、当審証人杉本愛蔵、森茂、平野弘の各証言を援用し、乙第一〇号証の一の一、二、同号証の二の成立は不知、乙第一一号証の一ないし一五が被控訴人主張の写真であることを認める、乙第一二、一三、一四号証の成立を認める、乙第一五号証の成立は不知、乙第一六号証の一、二の成立を認める、乙第一七号証の成立は不知、乙第一八号証の成立を認める、乙第一九、二〇号証の成立は不知と述べた。
理由
当裁判所も控訴人の請求を認容しがたいものと判断する。その理由は左に附加ないし訂正するほか原判決理由と同じであるから、これを引用する(ただし、原判決理由(四)の四行目に「総額金一八六、四二〇円」とあるのは「総額金一八六、二四〇円」の誤記と認められるので、そのように訂正する。)
(一) 原判決一七枚目表掲記控訴人の昭和二九年度賃料収入額六四五、一〇〇円とあるのを六五〇、四〇〇円と、これに権利金収入一〇万円を合した同年度総収入額七六一、九〇〇円とあるのを七五〇、四〇〇円と訂正し、これに従つて同判決末葉表掲記の「昭和二九年度における不動産所得はその総収入金額七六一、九〇〇円」とある右総収入金額を七五〇、四〇〇円に、また同「不動産所得は……五一八、三二一円である」とあるのを「不動産所得は……五〇六、八二一円である」と各訂正する。なお、右のように訂正認定した昭和二九年度の控訴人不動産所得額を以てしても、被控訴人の認定不動産所得四一八、七〇〇円をこえるものであることは明らかである。
(二) 右引用した原判決認定に反する当審証人杉本愛蔵証言部分は採用しがたく、乙第一二号証の記載中その項目の多くがその記載どおり支出された費用額を示すか否疑わしいばかりでなく、右証言、書証中にあらわれる祭礼費、神官謝礼、優勝旗費等は不動産所得についての必要経費とはなしがたい。
その他、右認定を左右するにたりる証拠はない。
(三) すなわち、控訴人の請求を認容しなかつた原判決は結局正当であり、控訴人の控訴は理由がない。
よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 県宏 裁判官 越川純吉 裁判官 西川正世)